音声の文字起こしで自分史を書く「口述筆記」
2023/03/17
自分の体験を本にしたいけど、文章を書くのがちょっとおっくう・・・
文章力にもあまり自信がない・・・
そんなときは、まず話してみませんか。録音して文字に起こす「口述筆記」なら、少し手を入れるとちゃんとした文章になります。
口述筆記とは
口述筆記とは、しゃべったことをほかの人がその場で書き留めていくことをいいます。 口述筆記で書かれた有名な小説に、太宰治の『駆込み訴え』があります。主人公の気持ちの動きが手に取るように分かる、流れるような文章は、口述筆記ならではでしょう。 自分史は書きたいけれどまとまった量の文章を書く自信がない――とうかたも、自分の経験について語るのであれば、気負わずにできるのではないでしょうか。 口述筆記の手法を借りて、まず自分の経験について語り、それを録音して自分で文章にする方法で原稿を作ってみてはいかがでしょう。
自分史を作る時は、まずどんなイベントに焦点を当てるか決めます。
家族のこと、仕事のこと、地元のこと、いままで訪れた土地や国のこと、打ち込んできた趣味やスポーツのこと、社会で起きた事件と自分との関わり・・・といったものを、大きなテーマとして選びます。この大テーマは、少なければ少ないほど引き締まった自分史になります。多ければ多いほど、まとめにくく、読む人にも負担がかかります。
できればひとつ、多くても2つに絞りましょう。
大テーマが決まったら、その中で記憶に残るできごとを書き出します。書き出すときは、順番は気にせず思いつくままに並べて大丈夫です。書きたいことが出尽くしたら、年代順に並べます。
プロのライターや作家が書くものは、まず現在のことを書いて、それからうまく過去の話につなげていくという手法のものもありますが、自分自身の記念や節目として作る自分史は、奇をてらうことなく年代順に並べたほうが読みやすいものです。
インタビューされている場面を想像する
項目が出そろったら、いよいよ口述を始めます。
音声を録音するには、スマートフォンのアプリやICレコーダーを使います。あとで録音を聞きながら文字起こしをしますので、テレビやラジオは切り、静かな環境で話しましょう。
「録音機に向かって一人でしゃべる」という状況は少し不思議な感じがしますので、話し始めは緊張するかもしれませんが、失敗しても何度でもやり直せますので、最初は練習のつもりでどうぞ気楽に。
コツは、ただしゃべるのではなく、「インタビューされている場面を想像する」ことです。
「絵を描き始めたきっかけは?」
と、どこかの記者に聞かれたつもりで、
「きっかけは、〇歳のときに、モネが好きな母親に連れられて〇〇美術館に行ったことです」
と、回答する。
「モネに感動したのですか?」
と、聞かれたつもりで、
「私はモネではなく、セザンヌに感銘を受けました。家に帰ってすぐ、クレヨンでリンゴの絵をたくさん描きました」
と、語る。
「セザンヌのどこが好きになったのですか?」
「私は、セザンヌの一番の魅力は色だと思います。リンゴの赤の色ひとつ見ても――」
そんな「一人二役」をやってみてください。時間がたつにつれ、だんだん楽しくなってきたら大成功です。
データは通し番号をつけてこまめに保存
1項目しゃべり終わったら、録音はいったん止めて音声データを保存します。あとで分かりやすいよう、ファイル名は「01きっかけ」「02中学の美術部」など、通し番号を振っておくと便利です。
録音機やスマホに残すだけでなく、パソコンにもデータをコピーしておきます。
話す速度にもよりますが、5分間しゃべって1000字ぐらいになります。
本は1ページ700字ぐらいが読みやすく、JIBUN出版は本文200ページまでです(超過する場合はオプション対応となります)。
改行や改ページ、画像も適宜入れることを考えて、原稿の文字数を決めます。
たとえば10万字ぐらいにしたいのであれば、8時間ちょっとしゃべれます。10万字と聞くと大変な量に思えますが、400字詰め原稿用紙にして250枚です。
次回、録音した音声データを文字に起こし、原稿に整える手順についてお話しします。