認知症と自分史-1
2025/11/01
近年、高齢者向けのプログラムで注目を集めている「自分史の執筆」。
認知症の進行防止に「回想法」という療法があり、自分史は回想法の効果が期待できるのだそうです。
今回は、認知症と自分史についてご紹介します。
「回想法」と自分史
「回想法」とは
認知症になると、最近のことを記憶する「短期記憶」が難しくなります。
しかし、昔のことは忘れません。
「回想法」は、認知症の人が保持している昔の記憶を誰かに話したり、相手からの質問に答えたり、相手の話を聞いてさらに思い出したりという刺激で脳を活性化させる療法です。
1960年代にアメリカの精神科医バトラー氏が、
「高齢者の回想は、死が近づいてくることにより自然に起こる心理的過程であり、また、過去の未解決の課題を再度とらえ直すことも導く積極的な役割がある」
と提唱しました。
過去の楽しかったことや輝いていた自分を思い出して楽しむだけでなく、未解決の課題に向き合う効果もあるということですね。
「心残りなこと」に自分なりの答えを出すことで、いわば「人生の総決算」が行われ、心がおだやかになるのでしょう。
自分史を作ることは、認知症の人にとって回想法を形にすることとも言えるでしょう。
思い出すままに話していることを、本という形にするのです。
「自分史制作」は、まだ認知症になっていない人の予防のほか、すでに診断を受けている人の進行を遅らせることが期待されています。
自分の生い立ちを振り返り、楽しかったことだけでなく、困難だったことも含めて、過去の出来事を思い出すことは、脳の海馬や前頭前野を刺激して認知機能の維持を目指す回想法そのものです。
本にするという目的を持つと、
「Aという出来事とBという出来事はどちらが先だったっけ?」
「この時、姪のC子は生まれていたっけ?」
と時系列を整理したり、
「なんでイタリアに行こうということになったんだっけ?」
「なんでイタリア旅行の時、娘はいなかったんだっけ?」
とエピソードを深掘りするきっかけになります。
時系列を整理すると論理的思考が、エピソードを深掘りすると注意力が鍛えられるでしょう。
日常生活の中に「自分史制作」
日々の張り合いに
仕事や、子育て・孫育てを卒業し、悠々自適の生活になると、趣味に没頭したり自分のペースで生活したりと、楽しいことも多いものですが、一方で、「日々の張り合いや目的がない」という状態におちいる可能性もあります。
「自分史を作ろう!」と決めて、
・思い出したことを紙に書いたりPCに入力したりする
・本にするという目標に向かって、写真を見る・思い出の場所に行く・出版社を探すなど、毎日少しずつ行動する
といった活動を日常生活に取り込むことで、張り合いや目的が生まれるでしょう。
紙に書いたりPCに入力したりするのが大変なら、身近な人に話を聞いてもらって、メモを取ってもらうのもいいですね。
この場合、
・人と対話する、コミュニケーションをする
という行動につながるので、孤立を防いだり、認知症に伴う鬱状態を防いだりする効果も期待できます。
自己肯定感の向上
冒頭で述べた「未解決の課題を再度とらえ直す」という行為を通じ、過去の問題に自分なりの答えを出すことで、自己肯定感が向上するかもしれません。
仮に答えが出なくても、ずっと気になっていたことや今でも後悔していることを、文字にしたり人に聞いてもらったりすることで、気持ちの整理がつくことも。
高齢になるにつれ、友達や親しい身内が減ったり、毎日ぼんやりしたりで、ストレスを抱えやすい環境になりがちです。
自己肯定感の向上と、ストレスの解消は重要です。
次回、具体的にどのように自分史制作を進めていくかをご紹介します。



