現れる? 表れる? 同音異字の使い分け
2022/09/30
「太陽が水平線からあらわれる」
「感情が態度にあらわれる」
このふたつの文章、漢字は「現れる」「表れる」のどちらを使うでしょうか。正解は、
「太陽が水平線から現れる」
「感情が態度に表れる」
です。
本を書いている時は、「周り」と「回り」、「伸びる」と「延びる」、「計る」と「測る」などなど、漢字の使い方で迷うことがよくあります。
迷う!同音異字
漢字の持つ細やかな意味を大切に
自分史・家族史・論文などを書いているときや、ブログ・SNSなどを書籍用にまとめているとき、同じ読み方で意味が違う「同音異字」の使い分けで迷うことがよくあります。
どの漢字にも、微妙な意味の違いがあります。
上に挙げた「現れる」「表れる」では、
現れる・・・隠れているものが、そのままの形で見えるようになること
表れる・・・中にあるものが、形を変えて見えるようになること
という違いがあります。
太陽は水平線から顔を出すときに形を変えませんので「現れる」。「影の首謀者がとうとう姿を現した」「改修中でずっとシートに覆われていた城が、その全貌を現した」という使い方をします。
一方、気持ちや因果関係など、形のないものが実態を伴うことが「表れる」。「幼少時の影響が大人になってから表れた」「治療の効果が少しずつ表れ、日増しに回復した」という使い方をします。
漢字の持つ細やかな意味を大切にして、文章に沿った意味の漢字を使うことで、よりいっそう明確に、読者に意図が伝わります。
パソコンの機能を活用する
執筆にパソコンのワープロ機能を使う人も多いでしょう。Windowsでは変換キーまたはスペースキーを2回押すと、変換候補がずらっと出てきますね。同音異字には、簡単な解説(文字コメント)も表示されます。日常的なメールやチャット、SNSの投稿などは、この機能で十分こと足りるでしょう。
しかし、例えば「手をはなす」の「放す」と「離す」はどう違うでしょうか。
パソコンの文字コメントでは「放す」は「解放、自由」、「離す」は「分離、距離」と表示されます。ならば「手をはなす」は「放す」なのでしょうか。
「放す」は、あえてがっちり握っていたものを解放する、放棄するという意味です。「離す」は距離を置くという意味です。
なので、ぎゅっと握られてつかまえられていたのなら「手を放して!」。お互いに手を握りたくて握っていたのなら、「この手を離さないでね」。
このように、状況や心理の機微を正確に表現するためには、パソコンの文字コメント機能だけでは少々物足りないかもしれません。
物書きなら知っておきたい本・サイト
お役立ちサイトや参考書
文章を書く人ならぜひ手元に置いておきたいのが、『朝日新聞の用語の手引き』(朝日新聞社)です。漢字の使い方や外来語の表記法だけでなく、同音異字の使い分けも例示があります。ただ、新聞用語の本ですので、当用漢字表にない漢字については、別の語への書き換えや、ひらがな書きを推奨しています。
文学作品など、当用漢字にとらわれずに書きたい場合には、『漢字の用法』(武部良明/角川書店)が役に立ちます。こちらは同音・同訓異字の使い分けに特化した辞書で、表外字や表外音訓も取り上げられていて、解説も詳しく、用例も豊富です。「ことば」「日本語」が好きな人なら、眺めているだけで楽しめる一冊です。
また、文部科学省の文化審議会国語分科会は「異字同訓の漢字の使い分け例(報告)」を公開しています。
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/ijidokun_140221.pdf
こちらはインターネット環境さえあれば、いつでもすぐに調べられるので、スマホやタブレットで文章を書く人にとっても便利です。
校正の時に表記を統一する
登場人物の気持ちや場面の設定など、書いているうちに変えたくなることもよくあります。すると、それに合わせて、漢字の使い方を変えたくもなることでしょう。
すでに書き上げたところを手直ししながら、先へ先へと書き進めていくわけですが、どうしても見落としや勘違いなどは生じます。
原稿は、出版社に入稿したあと、プロが文字組みやレイアウトを行い、紙に印刷されます。最初の印刷を「初校」と言います。漢字の表記の揺れは、この初校で直すことができます。
ダブルのJIBUN出版では、紙に印刷したものでも、PDFでも、どちらでも校正ができます。
さらに、その直しが正確に反映されているかどうか、もう一回印刷して校正ができます(再校校正)。出来上がりと同じ紙質で印刷し、仕上がりを実感していただけます。
また、修正内容によっては「三校」もチェックしていただけます。
【お客様の声】
何度も校正をお願いし、その度に修正箇所をたくさん指摘させて頂いたのに、嫌な顔も見せず引き受けて下さったので、初めての出版作業も随分気が楽になりました。有り難かったです。
https://double.tokyo/works/detail/222872/
校正2回と聞いておりましたが、3校で感謝しています。
https://double.tokyo/works/detail/222871/