認知症と自分史-2
2025/12/01
近年、高齢者向けのプログラムで注目を集めている「自分史の執筆」。
認知症の進行防止に「回想法」という療法があり、自分史は回想法の効果が期待できるのだそうです。
今回は、具体的にどのように自分史制作を進めていくかをご紹介します。
具体的な取り組み方
身近な人が「聞き書き」をする
認知症であってもそうでなくても、基本的な取り組み方は同じです。
昔のことを思い出して、書き留めること。それだけです。難しいことはありません。
ただ、認知症の場合、最近のできごとは時系列や登場人物がぼんやりしてしまうことがあるので、周囲の手助けが必要です。
そのため、認知症の人の自分史は、ご家族など身近な人の「聞き書き」が有効です。
「子どものころの話を聞かせて」
「小学校はどこに通っていたの」
など、少し水を向けてあげて、思いつくままに話してもらいます。
時々、話の途中に
「それはどんな友達? 名前は憶えてる?」
「どういうおうちだったの? 一軒家? アパート? 何階建て?」
など、話がふくらみそうな質問を投げてあげてください。
写真アルバムを見ながら進めれば、話も弾みそうですね。
「カード方法」を使う
お話を聞きながら手書きでメモをとると大変ですので、録音がおすすめです。
最近の録音アプリは文字起こしもしてくれるので、便利ですね。
写真の説明の時は、
「この、お母さんとちいちゃんがボールで遊んでいる写真だね」
など、あとから録音を聞いても分かるようにさりげなく説明をしておくと便利です。
インタビューは長時間だとお互いに疲れますので、毎日5分だけとか、週に2回各10分などのルーチンにしてしまうと楽です。
また、こうすることで、認知症の方の生活リズムを整えることの助けにもなります。
「次のインタビューまでに、思い出したことがあったら、紙に書いておいてね」
と宿題を出すのも効果的です。
ただし、「宿題」をやっていなくても、怒ったり不満げな顔をしたりしないようにします。
録音データや「宿題」のメモは、以前紹介した「カード方式」で整理します。
期待される効果と続けるコツ
効果と注意点
認知症の予防や進行抑止には、「脳トレ」「コミュニケーション」「運動」「食事」が大事だと言われています。
自分史インタビューは「脳トレ」「コミュニケーション」に当たります。
楽しかった時代を思い出すことで、ポジティブになり、精神的な健康をサポートできます。
逆に、苦しかったことや悲しかったことについては、慎重になったほうがよいでしょう。
前回ご紹介した「未解決の課題に向き合うことで心が整理がされ、人生の清算になる」という良い面もありますが、無理に聞き出すとストレスになります。
ご本人が話したがったら静かに相槌を打ちながら共感的に聞いてあげてください。
「共感的に」というのは、
「とても腹が立ったの」
と言われたら、
「腹が立ったんだね」
と答え、
「しょうがなかったのよ」
と言われたら、
「うん、それはしょうがないね」
と答えるなど、相手の気持ちを受け止めることです。どんな内容であっても、相手を否定したり非難したりしたところで、得るものはないでしょう。
くじけそうな時は
なかに大変なことです。
ご本人が「もう話したくない」「今日は頭がぼんやりしているから何も思い出せない」という日もあることでしょう。そんなときは無理をせず、思いきってしばらく休みましょう。
また、そういう時に備えて、あらかじめ、
「原稿がまとまったら、ここの出版社に頼もう」
と決めておくと励みになります。
くじけそうになったら、その出版社のホームページを見て、自分の(または自分たちの)本の完成形を想像し、目的を再確認してください。
「楽しかったことだけ思い出せばいいよ。ほら、こんなきれいな本にしましょう」
「子どもたちや孫たちは、本の完成を楽しみにしていますよ」
「題名も今から考えようね。表紙は何色にしましょうか」
と声をかけて、モチベーションが上がるのを待ってあげると良いですね。
そして、作業を続けることが難しいと感じたときは、主治医の先生など専門家にアドバイスを仰いでください。



